アンティーク・ジュエリーに使用される石を紹介いたします。

Agate アゲート

和名は瑪瑙。カルセドニーに縞模様が入った石。内包物が木や森のように見えるモス・アゲートはジョージアンから人気があった。スコティッシュジュエリーでも多く使用されている。風景に見えるものはランドスケープアゲートと呼ばれ芸術品のような美しさがある。現在で回っているアゲートは人工着色されているものも多い。

【産地】ブラジル、インド、アメリカ

Alexandrite アレキサンドライト

クリソベリルの1種で、自然光下で緑、白熱光下では赤紫に見える石。1830年、ロシアのウラル地方で発見された。1900年にはスリランカでも発見された。

6月の誕生石。

【産地】ロシア、スリランカ、ブラジル(1987~)、

Amethyst アメジスト

紫色のクォーツ。古代からインタリオなどに使用されている。19世紀のアメジストはブラジルとウルグアイ産が多く、上質なものはシベリア産のものもある。スコティッシュ・ジュエリーにも多く使用された。もともとは非常に高級な希少な石であったが1850年代にブラジルで大規模の産地が発見された。1940年代以降は多く出回るようになった。アメジストを加熱するとシトリンとなる(ザンビア産以外)。深い色合いが魅力的なシベリアン・アメジストが人気が高い。

2月の誕生石。

【産地】ブラジル、ザンビアなど

アメジストが使用されたモーニング・ジュエリー

アンティークにおいてアメジストは非常に高価な石の1つであり、重宝された。

Aquamarine アクアマリン

鉱物ベリルの一種で、海の色のような青色をしている。一般的に加熱処理がされることが多い。半透明なアクアマリンはミルキーアクアと呼ばれる。

3月の誕生石。

【産地】ブラジル、ナイジェリア、モザンビークなど。

Blood Stone ブラッドストーン

緑色の玉髄で赤い斑点を持つ。キリストの磔による傷口が緑の大地に落ち、ブラッドストーンとなったという伝説を持つ。古代よりアクセサリーで良く使用された。

3月の誕生石。

【産地】インドなど

Citrin シトリン

クォーツの1つで、語源はレモンを表すシトロン(Citron)。無処理のものは数が少ない。1883年にアメジストを加熱すると鮮やかな黄色になることが発見され、以降現在までほとんどが加熱アメジストである。

スコティッシュジュエリーでは定番の石であり、スコットランドでシトリンも含めケアンゴームと呼ばれる(日本では一般的にケアンゴームはケアンゴーム山脈からとれる黒褐色をさすことが多い)。

11月の誕生石。

【産地】ブラジルなど

Coral 珊瑚

海中の微生物によりつくられる。装飾品としては古代から使用されている。赤色やピンク、白などがある。スコットランドでは「少女に美と繁栄もたらす」とされ、エリザベス2世は生後9か月のときに母親から珊瑚のネックレスがプレゼントされた。汗に弱い。着色や漂白などの処理がされることがある。

3月の誕生石。

【産地】日本、台湾、イタリア、アメリカなど

Emerald  エメラルド

ベリルの一種で、緑色をしている。世界4大宝石の1つ。5月の誕生石。エメラルドは元来、キズが多い宝石でオイルや樹脂処理されることが多い。ほとんどがエメラルドカットと呼ばれる隅切りの長方形としてカットされる。

5月の誕生石。

【産地】コロンビア、サンダワナ(ジンバブエ、1956年発見)、ザンビア(1931年発見、1967年より生産) など

Diamond ダイヤモンド

天然で最も硬い物質であり、宝石の代表格である。黄色味を帯びたり、褐色の場合が多く、無色透明であるほど価値が高い。ただ、ブルーやピンクなどのカラーダイヤモンドは希少性が非常に高い。カラー(色)、クラリティ(透明度)、カラット(重量)、カット(研磨)の4Cによって評価される。アンティークでは、ローズカットやオールドマインカットなど現代とは異なる多くのカットが使用されている。特に古くは現在ほど輝き、裏側に箔を張ったり、塞がれたセットがされることがほとんどであった。20世紀後半には合成ダイヤモンドが開発されている。

4月の誕生石。


【産地】南アフリカ など

Garntet ガーネット

ジョージアンの頃はフラットカットによるものが多く、フォイルバックされ使用された。またフランスのペルピニャンでは18世期末から19世紀初頭までガーネットジュエリーの製作が流行した。特にダイヤモンドに使用されたローズカットによるカットが用いられた。

深く濃い赤のパイロープガーネット、ややピンクがかったアルマンダイトガーネット、紫がかったロードライトガーネット、そして1860年代からロシア・ウラル山脈で採掘された緑色のデマントイド・ガーネットなどがある。

18世紀から19世紀はパイロープガーネットが多く使用され、19世紀末はボヘミアンガーネット(チェコ、ドイツ産)も多く使用された。

1月の誕生石。

【産地】モザンビーク、オーストラリア、ナミビアなど

Peal パール

海水もしくは淡水に生息する二枚貝によってつくられる結石。成分はアラゴナイト。天然の真珠は希少性が高く、直径5mmほどの真珠は15,000の貝うち1つといわれ、綺麗な丸みを帯びたものはさらに少ない。日本などではアコヤ貝を使用した養殖真珠が多くつくられている。ほかにもシロチョウやクロチョウ、マベといった養殖パールがある。養殖真珠は1890年代に日本の御木本幸吉によって開始された(現在のミキモトの始まり。1920年代ごろから輸出を本格化)。

6月の誕生石。

【産地】ペルシャ湾、アメリカ(ミシシッピー川)など

★コンクパール / Conch Pearl

ピンク貝(コンク貝)からとれる真珠。

【産地】カリブ海

Onyx オニキス

白色の縞模様を持つアゲート。黒色に白縞のものを単に「オニキス」、橙色に白縞を「サードニクス」、それより透明度が高いものは「カーネリアンオニキス」と呼ばれる。現在で一般的に縞模様のないものをオニキスと呼んでいるが、それは染色されたものがほとんどである。

Opal オパール

ラテン語オパルス(Opalus、貴石の意)に由来する。蛋白石。遊色と呼ばれる独特な色合いのゆらめきがあるのが特徴。一般的なライトオパール、オレンジ系統のファイアーオパール、青色系統のウォーターオパール、地色が濃く高価なブラックオパール、そして母岩に付着したボルダーオパールなどがある。現在ではダブれっとやトリプレットといった張り合わせのものも多く流通している。

10月の誕生石。

【産地】ライトオパールは19世紀末までは現在のスロバキアで産出、1887年にオーストラリアで発見されて以降はオーストラリア産が主力。近年ではエチオピアン産がかなり増えている。ファイアーオパールとウォーターオパールはメキシコ産。ブラックオパールは1902年にオーストリアのライトニングリッジで発見。ボルダーオパールはオーストリアのクイーンズランド州から見つかる。

Peridot  ペリドット

橄欖石。オリビン(Olivine)。深いグリーンの色合い。19世紀にセント・ジョンズ島で見つかった。アーツ&クラフツ、エドワーディアンジュエリーでよく使用された。

8月の誕生石。

Rock Crystal ロック・クリスタル

無色透明なクォーツ。アンティークではシールなどのインタリオでよく使用された。

【産地】ブラジル

Ruby ルビー

コランダムの一種で赤色のもの。ラテン語で赤を意味するルベウス(Rubeus)が語源。非常に美しく、特にピジョン・ブラッド(鳩の血)と呼ばれるミャンマー・モゴック産の無処理ルビーは非常に効果で取引されている。

1904年、フランス人ベルヌーイが合成ルビーを発表。世界中の業者が本物として扱ってしまったため、宝石学が発展するきっかけとなった。

7月の誕生石。

【産地】ミャンマー、タイ、モザンビークなど

Sapphire サファイア

コランダムの一種で赤色以外のもの(青色がサファイア、それ以外がファンシーカラーサファイア)。カシミール産のコーンフラワーブルー(ヤグルマギクのような落ち着いた上品なブルー)、ミャンマー産のロイヤルブルー(無処理でやや紫がかった青)などは高値で取引される。一般的には加熱処理されたものが多い。合成石もある。

9月の誕生石。

【産地】カシミール(1881年~)、パイリン(カンボジア、1875年~)、スリランカ、マダガスカル(1998年~)など

Tourmaline トルマリン

電気石。緑色のグリーントルマリン、ピンク色のピンクトルマリン、その他オレンジやイエロー、パープルなど多様にある。18世紀まではエメラルドと混合されていた。1987年に非常に鮮やかなブルーのパライバ・トルマリンが産出され、1989年に発表され、現在非常に高い人気を誇っている。

【産地】ブラジルなど

Vauxhall glass ヴォクソール・ガラス

18世紀から19世紀半ばまでロンドンのヴォクソールで製作されたガラス・ジュエリー。赤や青、緑、銀色、黒や紫など多様な色があり、表面は鏡のような反射がある。またヴォクソール・ガラスと呼ばれるものは数説あり、1663年から1780年までにヴォクソールにあった工場のものをさす場合もある。

【参考文献】

『Starting collect Antique Jewellery』(John Benjamin、Antique Collecters club、2003)

『価値がわかる 宝石図鑑』(諏訪恭一、ナツメ社、2016)

『Georgian Jewllery 1774 – 1830』(G.R.Dawes,O.Collings、2007)