ガラス

今回はボヘミアンガラスについて解説。

近世ガラスの中心地、ボヘミア。アンティークでも有名なジャンルでありながら、日本では詳しく知られることがないジャンルです。ボヘミアンガラスは品質が非常に高く、装飾技術も優れたガラスでした。戦後からはかなり衰えてしまいましたが、アンティークではやはり素晴らしさを感じるジャンルです。

ボヘミアンガラスといっても国内外でひとまとめにされていますが、狭義でいえばもちろんボヘミアで生産されたガラスですが、シレジア(現ポーランド)やオーストリア、ザクセン、ババリアなどドイツ系もスタイルが酷似しているため、かなり混同されています。これは見極めるのは非常に困難。それもそのはず、国が違うとはいえ地域的には非常に近い地域で生産されています。

ボヘミアを中心としたガラス工房マップ(1900年頃を推定、元の地図は現在の区分けによる)

これを見ると、例えば北ボヘミアのハラフとシレジアのヨゼフィーネンヒュッテは山を挟んでかなり近い距離にあることがわかりますし、南ボヘミアのマイヤーズネッフェとババリアのテレジアンタールなども近いことがわかります。

ボヘミアンガラスにはガラスの素材となる森林が不可欠であり、北ボヘミアはクルノコシエ、南ボヘミアはシュマヴァがその資源地となっています。

ついでにフリッツ・ヘッケルトはドイツと思われがちですが、シレジアは位置的には現在のポーランドです。ここら辺は歴史的に争奪戦が何度もあった複雑な地域ですね。当店ではシレジアの工房として扱っています。

工房関係でいえば、ヘッケルトはヨゼフィーネンヒュッテにより1920年代に買収。また、マイヤーズネッフェもオーナーはクラリクで、クラリクはロブマイヤーと親戚関係となり、マイヤーズネッフェはロブマイヤーの商品を製造していました。また、ロブマイヤーはカメニツキー・シェノフにも支部があり、そこでも製造をしていました。ヨゼフィーネンヒュッテもロブマイヤーのために製造したモデルがあるとの話もあるようです。こうみると、ロブマイヤーがいかに広い範囲に渡って関係があったのかがわかります。

南ボヘミアのレッツやクラリクはアール・ヌーヴォー期に活躍したことが有名ですね。逆に北ボヘミアはエングレーヴィング技術に長けた工房が多いです。

モーゼルは位置的にちょっと浮いていますが、現代では、上記で一番有名な工房になっているのではないでしょうか。

18世紀として考えると、中心地はクルノコシエ山脈付近が栄えており、シレジアは優れたエングレーヴィング技術があり、ハラフはボヘミアンガラスの発展を支えました。地図上の工房でも18世紀から存在していたのはハラフのみ。ほかにも18世紀はザクセン、テューリンゲン、フランケンなどドイツではそれぞれの地域で優れたガラスが製造されていました。

以上、ボヘミアンガラスを簡単に紹介してみました。一つ言えるのは、総じてそれぞれの工房特定が困難であるということ。奥が深いボヘミアンガラスです。