今回は「アンティーク」について少しお話。昔から当店をご覧いただいているお客様はご存じかと思いますが、基本的にアンティークとして一番優れていたのは18世紀だというのが私の基本的な考え方です(入手できる範囲の時代として)。これは銀器、ガラス、陶磁器などに共通するものです。これはその後、産業革命により機械技術が発達し、大量生産になったという背景もあります。
で、「アンティーク」の定義について、よく「100年以上前に製造されたもの」という説明があります。これは関税法によるもでので、ご存じの方は多いと思います。ですが、これをただ文字通り「100年以上前に製造されたもの」と捉えるのはどうなのかという話です。まず、「100年以上前に製造されたもの」という定義の始まりは1930年の米国スムート・ホーリー法によるものです。その内容は「1830年より前に製造された装飾的もしくは教育的な価値のある芸術的な作品」をアンティークとしているのです。これはただ単に100年前なのではなく、アンティークたる芸術性を持った品物は1830年より前のものと認識していたということです。この1830年というのがポイントですね。現代からみても、やはり1830年前後はターニングポイントです(それ以後は量産品が増えた)。この前後で工芸品の品質は明らかに異なります。
つまり、何が言いたいのかといいますと、昔の人も古いもののほうが芸術的だと感じていたという点もそうなのですが、ただ「100年以上前に製造された」からアンティークなのではなく、あくまでもその本質は芸術性の有無であるということです。ただ古いだけの物はアンティークといってよいのかは個々の判断ですが、蔓延しつつある「アンティーク」という言葉の安売りには注意が必要です。