Cut steel

磨き上げた鋼の鋲でダイヤモンドの輝きを写した装身具。

シャトレーン、17〜19世紀。カット・スティール
シャトレーン、17〜19世紀。カット・スティール
メトロポリタン美術館蔵(91.1.1133)、パブリックドメイン。所蔵品ページ

素材と作り

カット・スティールは、明るく磨いた鋼のリベット(鋲)の先端にファセットを付け、ダイヤモンドに見立てたものである。灰色ながら力強い輝きを放つ1。1795年頃のボタンの例では、鋳造した台板に外周の鋲を一つずつリベット留めしている3。

流行した時期と用途

1800年前後の数十年間、ジュエリーのほか、ボタン、バックル、剣の柄、時計鎖に用いられた。もとはイングランドの特産であったが、19世紀初頭までにはヨーロッパ各地に生産が広がっている1。V&A所蔵の1815年頃のパリュール(ブレスレット一対・ベルト・櫛)は、ロシアのトゥーラ製と推定されている1。

18世紀後期には紳士用のカット・スティール製ボタンが流行し、きわめて高価でもあった。1777年、マシュー・ボールトンは一揃いに28ギニーの値を付けている3。

マシュー・ボールトンとソーホー製作所

18世紀末、最も名高い製作者はバーミンガムのマシュー・ボールトン(1728–1809)である。ジョン・フォザギルと1762年から1781年まで、ジェームズ・ワットと1775年から1800年まで共同経営を行った23。

ボールトンは量産の手法によって安価な製造を可能にした。水車の力で動く大型のブラシで鋼を磨き、1788年にはワットの回転式蒸気機関がソーホー製作所に据えられ、研削・研磨用の車輪を動かした23。

ウェッジウッドのジャスパー製プラークを嵌めたシャトレーン(1785年頃)も残る。シャトレーンは帯から下げ、印章・鋏・鍵などの日用品を携えるための道具である2。

身に着け方

V&A所蔵の1775–1800年のブレスレットは、鋭いリンクで手首を傷つけないよう、もとは絹のリボンに取り付けられていた4。

出典

  1. V&A 所蔵品記録 M.306 to C-1919(カット・スティールのパリュール、1815年頃) collections.vam.ac.uk ↗
  2. V&A 所蔵品記録 M.25-1969(シャトレーン、マシュー・ボールトン、1785年頃) collections.vam.ac.uk ↗
  3. V&A 所蔵品記録 M.30-1997(カット・スティールのボタン、1795年頃) collections.vam.ac.uk ↗
  4. V&A 所蔵品記録 M.52A-1969(ブレスレット一対、1775–1800年) collections.vam.ac.uk ↗